世界遺産の広報職員が教える京都「本当に癒されるパワースポットその②松尾大社」

 本日9月1は、京都市西京区の嵐山近くにある、松尾大社恒例の大祭「八朔(はっさく)祭」が盛大に執り行なわれます。

 「朔」(さく)とは、物事の始まりをあらわしますので、つまり八朔とは、旧暦(むかし日本で使われていた月を基準とした暦)でゆう「8月1日」の事を云い、これは現在の太陽暦に直すと9月1日、つまり今日になるんですね。

 江戸時代には、江戸幕府を開いた徳川家康が、天正18(1590年)8月1日に、初めて江戸城に入城した日と云われ、関東の方ではこの「八朔」の日は、盆と正月に次ぐ祝日としてご存知の方も多いと思います。
 
 そもそものいわれは、古くからこの時期になると、田んぼの稲の穂が頭(こうべ)を垂らし始め、また、きのこや果実などの山の幸が収穫期を迎え始めるため、人々は、害虫や台風などの災難を避け、稲穂や山の実りの豊穣を祈願するため、全国各地の寺社において「八朔祭」が営まれてきました。

 ちなみに私たちに一番身近にある果物の「はっさく」は、このころから食べごろを迎えるため、この名が付けられたそうですよ。(^-^)

 

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松尾の猛霊(もうりょう)と称される荘厳な松尾大社の本殿

 

さて、今回の

京都「本物のパワースポット巡り」第2弾

では、この松尾大社をレポートしたいと思います。

 

 

 松尾大社の起源は5世紀ごろまでさかのぼり、当時の京都の地を、前回に紹介した下鴨神社を氏神とする豪族「賀茂氏」と、二ぶんして治めた豪族「秦氏(はたし)」の産土神(うぶすながみ)で、京の都では古くから「賀茂の厳神、松尾の猛霊」(かものげんしんまつおのもうりょう)と云われ、あがめられると共におそれられてもいました。

 

 下鴨神社と同じく日本最古の記録書『古事記』の中においても、既に松尾大社に関する記述が見られ、京都を代表する神社であると共に、日本最古の神社の一つと云われています。

 

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阪急松尾大社駅を下車後、すぐ目の前にある参道を歩くとほどなく鳥居が見えます。

吊り下げられている枯葉は、穢(けがれ)を祓う力があると云われている「榊」(さかき)です。原始の神社では、境内の大木に榊を吊り下げることにより、神域と人の結界としており、それが鳥居の始まりだそうです。

 

 

 本殿には、主祭神(しゅさいしん)として「大山咋神」(おおやまくいのかみ)と「市杵島姫命」(いちきしまひめのみこと)の二つの御柱が祀られています。

 

 この「大山咋神」は、ここから比叡山を越えた大津市坂本にある「山王総本宮日吉大社」の「東本宮」の主祭神

と同じ神様です。

 私は、仕事関係でよく日吉大社を訪れ、先日も宮司さんからお話を伺っていたのですが、日吉大社には「秦氏」を起源とするような「謂われ」を聞いたことがないので、まさしく「寝耳に水」な話です。(^_^;)

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同じ「大山咋神」が祀られている、山王総本宮日吉大社の西本宮本殿

(写真は屋根の葺き替えに伴う今年3月24日の遷御式の日の写真)

 

ただ、両大社とも神域の奥の院に鎮座する大きな「岩」を神格化することで、「磐座」(いわくら)として祀ってあるので、元々から信仰の対象であるこの「磐座」に対して、朝廷の「万系一世」(天皇は日本を創った神様の末裔であるという考えの元、伊勢神宮に祀られている太陽神天照大神(あまてらすおおみのかみ)を頂点に、日本の神様は全て一つにつながっているという、現代最もポピュラーな神道の考え方)の神様を少々強引に当てはめた結果なのかと思います。

 

 しかし、神輿の担ぎ手である「駕輿丁」(かよちょう)の名称が残っていたり、春の例祭において神輿を船に載せる「船渡御」(ふなとぎょ)が行われていたりと、いろいろと共通する部分も多いので、今後も継続して研究が必要かなぁと思いますね。

 

 もう一方の主祭神は「市杵島姫命」。この「いちきのしま」という名前を何回か口ずさんでいると、何となく「いつくしま」に聞こえてきますよね。

 そうなんです。この神様は、広島県の厳島神社「いつくしまじんじゃ」に祀られている主祭神と同じ神様なんですね。

 

 この姫命は、『古事記』の中で天照大神の弟神で、天界の高天原(たかまがはら)を荒らしまくった天界一の暴れん坊「スサノオ命」の娘神と云われており、やはりこの松尾大社にも、地元の大豪族の産土神と、朝廷からの天孫系(てんそんけい)の神様を併祀(へいし)するというパターンがあてはまっていますね。

 また、水の神様としても有名で、その名の通り境内は、楼門をくぐってすぐの一の川や、亀の井などいたる所に豊富に水が流れ、また湧き溢れています。そして酒造りには水は欠かせないということから「お酒」の神様としても全国に知れ渡っています。 

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楼門の風景 松尾大社は、下鴨神社に比べて趣が異なり、全体的に地味だが重厚で落ち着いた建造物で構成されている

 

 

 さて、話を「八朔祭」に戻しますが、この例祭は、松尾大社の公式祭典として斎行されてきたお祭りで、先にも触れましたが、秋の収穫期を迎える頃、風雨を避け、順調な五穀豊穣、家内安全を祈ることを目的として、130年前の明治18年から始まりました。

 以前は9月1日の定日に行われておりましたが、昭和51年からは、現代人のライフスタイルに合わせ9月の第一日曜日に執り行なわれているそうです。

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本殿を拝す 写真を撮りに行った日は、八朔祭に向けての準備で、皆さん大忙しの様子でした。

 

 私が初めてこの松尾大社を訪れたのは、3年前の9月5日のことでした、当時、土、日の休日を使ってしょっちゅうパワースポット巡礼をしていたのですが、松尾大社には、全くこの日が「八朔祭」とは知らずに参詣に訪れました。

 記録的酷暑と言われたその日は、9月とは到底思えないくらいの暑さだったことを記憶しています。 日中だったので、参詣者はそんなに多くなかったのですが、境内の拝殿には、子供たちの奉納太鼓が元気よく鳴り響いていました。

 

 その日の私の目的は、御神体である「磐座」を拝することだったのですが、この日は年始を除いて年に一回しかない松尾山への入山が禁じられている日だったので、自分の運の無さにうんざりしながら、泣く泣く登山を諦めたものでした。

 

 しかし今から考えると、たまたまにもかかわらず、年に1度の大祭に訪れられただけでも十分な運の強さであり、その上、こうしてちょうど3年後の八朔祭の日にこの記事を書いていること自体に、非常に強い勝縁を感じます。

 

 

 数日前に写真を撮りに松尾大社を訪れた時も、関係者の皆さん祭りの準備に余念がなく、右往左往してられました。

 私は本殿を拝した後、3年越しに磐座を拝するため、松尾山へ拝登入山しました。

 

 拝登は、大人1人1000円という少々高い目の初穂料を納めます。また、神域のため、受付以降は写真撮影が禁止されていましたので、映像でお伝えすることができませんでした。残念です。

 

 

 さて、山内に入ると「糺の森」の時と同じように、一気に気温が下がります。空気の引き締まり感も半端ではなく、この場所が、人治の行き届かない「聖域」であることを痛感します。山内の道を一歩一歩踏みしめる度に本当に癒されていく自分を感じることができました。

 ほどなく磐座に到着。3年前訪れた時に松尾大社からいただいた「パワー」に、感謝の誠を捧げてきました。

 

 

 下山し、登り口の入口まで戻ると「霊亀の滝」があります。

 この滝からは、松尾大社の霊獣である甲羅(こうら)に奇瑞の文字が刻まれた霊亀が何度も出現したとの云い伝えがあり、滝の中腹には滝の「霊亀」を神敵から守るように天狗の顔で睨みをきかす「天狗岩」が見えます。

 

天狗

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霊亀の滝の拡大写真です。鳥居の横付近に、こちらに向かい睨みをきかす天狗の横顔「天狗岩」が見えます(見えるかな?(^_^;))

 

 以上が今回の報告です。

 本日行われている八朔祭の話は全然出てこないので、それ目的でこのブログを見た方には残念な結果になったかもしれませんね。(T_T;) すいませんでした。

 まぁ本来このブログは、本物のパワースポットで癒されたい人のために、参考になるように書いているブログなので勘弁してください。

 

 この松尾大社は、京都の神社の中でも、京都で三指に入るほど由緒正しい謂われの割に、そんなに派手な存在でもなく、普段はそんなに訪れる人もいません。

 車で来られた場合でも、すぐ目の前の駐車場に無料で停めることができるので、入山の際の初穂料以外はお金は一切かかりません。庭園を拝観するには別途500円が必要ですが。

 

 今回3年振り松尾大社を訪れましたが、下鴨神社とは一線を画した重厚で無骨な神社で、雅な平安貴族のイメージはほとんど感じることは出来ませんでした。

 私の個人的な感想ですが、「癒される」というより、「やる気」をいただき、元気になれる「パワー」を授かれるスポットかなぁと思いました。

 

 皆さんも、京都を賀茂氏と共に二分して治め、「猛霊」と称された秦氏の氏神で「やる気」のパワーを充填してみるのはいかがでしょうか。

 


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